はじめまして、kachapo(カチャポ)と申します!
お茶の名産地である静岡で、小さなお店を構えています。(静岡市葵区瀬名地区で営業している「勝山茶本舗(かつやまちゃほんぽ)」というお店です。)
この記事ではとっておきのお茶の淹れ方を紹介します。
この方法は、ひとことでいえば「裏ワザ」です。
正攻法ではありません。
でも、美味しくなるんです。

飲んだ瞬間に「あっ、いつもとちがう!」とわかります。
しかも、だれでも、すぐにできる方法です。
そんな魔法のテクニックを紹介します。
記事を読んだら、ぜひ1度挑戦してください!
- これだけ? → 水を先に入れるだけ
- 美味しくなる → うま味がたっぷり出る
- 味を引き出す → 化学の力でコントロール
- 魔法のテクニック → 手間いらずの裏ワザ!

記事内では「裏ワザ」の表記に統一しています
裏ワザの大まかな手順
まずは、裏ワザの大まかな手順を紹介します。
- 急須に茶葉を入れる
- 急須に水を注ぐ
- しばらく放置する
- 急須にお湯を注ぐ
- 10秒以内に茶碗へ
裏ワザは「濃縮された水出し茶を、お湯であたためる」ような感じをイメージをしてください。

「先に作った水出し茶を、お湯であたためる」イメージです
この手順のポイントを解説します。
裏ワザの4つのポイント

この裏ワザの4つのポイントを解説します。
- 「これだけ」って何をやるの? → 水を先に入れるだけ
- なぜ美味しくなるの? → うま味がたっぷり出る
- どうやって味を引き出すの? → 化学の力でコントロール
- なぜ「魔法のテクニック」なのか? → 手間が省ける
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POINT ①
「これだけ」って、何をやればいいの?

裏ワザといっても、むずかしい方法ではありません。
やることは、たったひとつ。
「お湯を注ぐ前に、水を入れて茶葉を湿らす」だけです。

「先に水を入れて、後からお湯を入れる」と覚えてください!
どんな水を使えばいい?

「水を使う淹れ方なんです」と紹介すると、よく頂く質問があります。
- 冷たい水がいいですか?
- ミネラルウォーターを使った方がいいですか?
- 水道水はダメですよね?
答えは「蛇口から出る常温の水でOK」です。
「ミネラルウォーター=上質な水」という発想には、こだわらないでください。
必ずいい結果になるとは限りません。
(水質が影響します)
温度に関しても、キンキンに冷やす必要はありません。
キッチンで使う普通の水で、まったく問題ありません。
POINT ②
なぜ美味しくなるの?

今までに「水出し緑茶」を飲んだ経験が、ありますか?
もし経験がありましたら、そのときの味を思い出してください。
スッキリとした甘みが口の中に広がり「美味しい」と感じたはずです。
裏ワザでは「水出し緑茶」を作る方法を利用することで、お茶の「うま味」がたっぷり抽出されたお茶ができるので「美味しいお茶」になります。
POINT ➂
どうやってお茶の味を引き出すの?

お茶を淹れる工程の中で、もっとも重要な工程が「抽出」です。
「茶葉から何を引き出したか?(抽出したか?)」によって、お茶の味が左右されます。
裏ワザは「温度」を利用することで、お茶から抽出される成分をコントロールしています。
温度によって変わる抽出成分

茶葉は、水分(水やお湯)に触れることで、成分の抽出がはじまります。
茶葉に含まれる成分は、温度によって抽出のスピードが異なります。
低温で
抽出されやすい成分
- アミノ酸類(うま味・甘味)
- テアニン(甘味)
高温で
抽出されやすい成分
- カテキン類(渋味・苦味)
- カフェイン(苦味)
「高温のお湯」に触れると「苦味」や「渋味」がたくさん抽出されてしまい、味のバランスとして雑味を感じやすくなります。
反対に低温の水を使うと「うま味成分」がたくさん抽出されます。
「水出し茶」が甘く感じるのは、抽出された成分のほとんどが「うま味」だからです。

茶葉と触れる液体の温度によって、抽出される成分が変わります
低温抽出のメリットとデメリット
水を使う「低温抽出」の効果は3つあります。
- うま味成分の抽出を促す
- 雑味成分の抽出を抑える
- 酸化による変質を防ぐ
うま味成分が抽出されやすい状態であると同時に、渋味や苦みという雑味の抽出が抑えられる状態も保つことができます。
ただし低温抽出の場合は、長めの抽出時間が必要です。
そのため手順の中で「しばらく放置する時間」を設けています。
POINT ④
なぜ「魔法のテクニック」なのか?

裏ワザは、一般的に推奨されているお茶の淹れ方と比べて、手間を省くことができます。
裏ワザの2つのメリット
一般的な淹れ方のポイントと、裏ワザのポイントを比較してみましょう。
- お湯の温度を調整する
(70℃~80℃くらい) - お湯を注ぎ、じっくり待つ
- 沸騰したお湯でもOK
- お湯を入れてから待たない

裏ワザは正反対の方法です
「本当に、そんな方法でいいの?」と不安を感じるかもしれませんが、裏ワザを使うメリットがあります。

この2つが裏技を使うメリットであり「魔法のテクニック」の理由です。
手間いらずポイント①
お湯の温度を気にしなくていい
出来立ての新茶や、値段の高い上級なお茶を淹れるときは、沸騰したお湯を使ってはいけないのが一般的なセオリーです。
美味しくお茶を入れるために適したお湯の温度は70℃~80℃くらいとされています。

温度は味に影響します!
しかし、毎回温度を測るのは現実的な方法ではありません。
対して裏技は、お湯の温度を気にする必要はありません。
お湯の役目は「水出し茶をあたためること」であり、抽出される味への影響はありません。
沸騰したばかりのお湯を使うこともできます。
「お湯の温度を測らなくていい」メリットがあります。

裏技なら、温度を計らなくていい!
手間いらずポイント②
抽出時間を気にしなくていい
急須でお茶を淹れる過程において「茶葉から成分が抽出される時間」が必要です。
お茶の味に影響するもう一つの要素が、この抽出時間です。
茶葉がお湯に浸かっている時間が、そのまま抽出が行われている時間になります。

抽出時間も味を左右する要素
しかし抽出時間の長さは、見極めるのがムズカシイです。
- 時間が短いと、味がうすい
- 長いと雑味が強く出てしまう(渋い、苦いなど)
またちょうどいい抽出時間は、お茶の種類によっても変わるため「これがベスト!」という決まったものはありません。
「違いを楽しむ」のも「お茶の嗜み方」と捉える考え方もありますが、失敗した場合のリスクは避けたいのが本音です。
一方で裏ワザの抽出時間は「水に浸かっている時間」です。
茶葉が水に浸かった状態だと「うま味成分」の抽出は促進されますが、雑味の抽出は抑えられます。
抽出時間が長くなってしまっても、美味しい状態が保たれます。

抽出時間の長さが、味に影響しません
解説は、一旦ここまで。
私が実際にお客さんに実演したり、お問合せ対応をしてきた経験から、大事なポイントを簡単にまとめました。
- 水を使い「うま味成分」をたっぷり抽出する
- 抽出成分は温度でコントロールする
- 抽出時間、お湯の温度は測らない
ここまでの内容で「わからないよ」「もっと知りたいよ」ということがありましたら、お気軽にお問合せください。
次の章では、裏技の詳しい手順とマスターするための「さらに詳しいアドバイス」を伝授します。

裏ワザを、実際にお試しください!
裏ワザの詳しい手順(写真付き)
では、これから実際のくわしい手順を、写真付きで紹介していきます。
ところどころ「裏技マスターになるポイント!」が登場します。
裏技を実践するにあたり、ポイントを理解しておくと「急須の中で何が起きているのか?」を想像できるようになるので、より安心して裏技が使えるようになります。

大事なアドバイスですので、しっかり読んでくださいね!
まずは準備(必要なモノ)
お茶を淹れる準備をしましょう。
通常の淹れ方で用意するものと、ほとんど変わりありません。
- 茶葉
- 急須
- お湯
- 湯呑(茶碗)
- 水

「水」を追加で用意しましょう!

写真には「急須」と「茶葉」と「水」が映っています。
急須
今回撮影用に使用したのは「割れない透明急須」という商品です。

- 「ポリカーボネート」という丈夫な素材
- 軽い(本体重量は150g)
- 耐熱(110℃)、耐冷(マイナス20℃)
- 3人分の容量(270ml:1人あたり90ml換算で)
- ステンレス製の網付き(網目は細かい)

急須の形なので、お茶も美味しく淹れられます
茶葉
当店のお茶(深蒸しタイプの煎茶)です。

急須の容量が「3人分」だったので、茶葉も「1人あたり3gを目安」として「3人分=9g」としました。

撮影するために量りましたが、いつもは目分量です。
水
キッチンの蛇口から出る「普通の水」です。
- 用意した水の容量は「60ml」(大さじ15ml x 4杯)
- 温度は常温(冷たすぎると抽出が遅くなるので注意)
- ミネラルウォーターでなくていい

「水」も撮影用にに量りました。
いつもは目分量です。
用意が出来たら、いよいよお茶を淹れてみましょう!
手順①:急須に茶葉を入れる
用意した茶葉を、すべて急須に入れます。
写真をスライドできます!
手順②:急須に水を入れる
茶葉が投入された急須に「水」を入れます。
写真をスライドできます!
- 水を入れる目的は「茶葉を湿らすこと」
- 水の量は「茶葉が浸る程度」(計らなくてもOK)
- もし水の量が多過ぎた場合でも失敗ではないので、続行すること!
- 水の温度も計らなくていい
撮影用に水の分量を「60ml(大さじ4杯分)」と計りましたが、厳密に計らなくても構いません。

写真の分量だと「ちょっと量が多いかな?」と感じたぐらいです。
問題ないので、そのまま続けました。
手順③:しばらく放置する
急須の中は「茶葉」と「水」が入った状態ですが、そのまま数分間放置します。
何もぜす、ただ放っておけばいいです。
写真をスライドできます!
茶葉が水を吸って膨らんできます(写真をスライドして確認できます)
この時間が「水出し茶」が作られてる時間です。
- 水に浸した状態のまま、ホントに何もしなくていい
- 浸す時間の目安は最低2分くらい
- 浸す時間が長くなっても問題ない(5分、10分になっても失敗ではない)
- 茶葉が水を吸って膨らむ状態になればOK
- 水分がなくなっても、追加しなくていい

時短テクニックとして、この放置する時間でお湯を沸かすのもアリです!
手順②と手順③の部分が「濃縮された水出し茶」を作る工程です。
- 茶葉に水を吸わせることが目的
- 水分がなくなってしまっても心配なし
水を吸った茶葉は、成分の抽出が進行しています。
水を追加する必要はありません。
手順④:急須にお湯を注ぐ
急須にお湯を注いだら、急須の蓋をして、茶碗へ注ぐ準備を整えましょう。
写真をスライドできます!
お湯の温度は問いません。
沸騰したお湯でもOKです。
手順⑤:すぐに湯呑(茶碗)へ注ぐ
お湯を入れたあとは、テキパキ行動してください。
茶葉がお湯に浸かっている時間が長くなると、苦みや渋味がたくさん抽出されてしまいます。
雑味を抑えるために「お湯に浸かっている時間を短くする」のがコツです。

目安として、お湯を入れてから「5秒以上、10秒以内」に注ぎはじめましょう!
写真をスライドできます!
- お湯を注いでから、すぐに湯呑(茶碗)へ注ぐ
- 目安の時間は「5秒以上、10秒以内」
- お湯に浸かる時間が長くなると、雑味が多い味になる

雑味を抑えるには、お湯の時間は短くすること!
手順は、以上です。
仕上がりを調整できるポイント
裏ワザを使って自分好みの味が出せるようになるまでは、何度か挑戦していただくことになるかも知れません。
その際に調整できるポイントをまとめておきます。
- 茶葉の量 → 味の濃さに影響します
(多いほど「濃く」なります) - 水の量 → できあがりの温度に影響します
(多いほど「ぬるく」なります) - お湯の時間 → 味のバランスに影響します
(長いほど「渋味・苦味」が多くなります)
裏ワザのメリットとデメリット
ここまで「裏ワザ」のポイントと手順を紹介してきました。
この裏ワザは「手間いらず」がメリットなので、コツを掴んでしまえば、とても便利で楽な方法です。
他にもメリットがあります。
また「デメリット」もあるのでお伝えします。
メリットは「どんなお茶でも使える」
裏ワザは「化学的な原理」を応用したお茶の淹れ方です。
手順写真では「深むしタイプの煎茶」を使いましたが、他の種類の緑茶でも同じ方法が使えます。
さらにお茶の品質(グレード / 値段が高い安い)を気にする必要がありません。
つまり、どんなお茶でも共通して使えるテクニックです。
どんなお茶でも同じ方法が使える
- お茶の種類(煎茶、くき茶、玄米茶、など)
- お茶の品質(新茶もOK)
- お茶の値段(値段が高いお茶も、安いお茶も)
デメリットは2煎目以降は印象が変わる
良いことづくしの裏ワザですが、ひとつだけ「デメリット」があります。
それは、2煎目になると味の印象が大きく変わることです。
その理由は、主に2つあります。
- 1煎目で「うま味」が出過ぎてしまう
- 2煎目以降は「雑味」が抽出されやすい状態
ひとつは、はじめの抽出(1煎目)で、うま味成分がたくさん引き出されてしまうことです。
茶葉の中にうま味成分が残っていないわけではありませんが、2回目の抽出(2煎目)以降は、うま味成分の含有量が少なくなってしまいます。
2つめの理由は、2煎目の時は「すでに茶葉が高温の状態」であるため、雑味(渋味・苦味)が抽出されやすくなります。
つまり、どうしても「うま味が少なく、雑味が多い」お茶になってしまうため、1煎目のお茶とのギャップを大きく感じることになります。
裏ワザを、ぜひお試しください!
今回紹介した裏ワザ「お茶の味を最大限に引き出す魔法のテクニック」は、「絶対に美味しくなる=失敗しないお茶の淹れ方」です。
水を使い、抽出される成分をコントロールすることで、「うま味が凝縮された、あたたかい日本茶」を楽しめるようになります。
また「渋味」や「苦味」を抑える効果もあるので、日本茶の味が苦手な人にも飲みやすいお茶になります。
まずは自宅にある日本茶でお試しください
この裏ワザは、日本茶の性質を化学的に利用した方法です。
お茶の種類や品質(グレード)に関係なく、どのお茶でも通用します。
まずは、お手元にある日本茶で試してください。
いつものお茶の印象が変わり「このお茶、こんなに美味しかったんだ!」と気がつくはずです。
変化を楽しむ心で日本茶を味わってください
今回紹介した裏ワザは、私が自信を持ってオススメしている方法ですが、お茶の「苦味」や「渋味」を必ずしもゼロにすることが正しいとは思っていません。
「うま味」で「ホッとする和み」を感じる一方で、「苦み」や「渋味」は「目が覚めるように気分をスッキリさせてくれる効果」もあります。
裏ワザのデメリットとして「2煎目以降は印象が変わる」と説明しましたが「日本茶は味が変化する飲み物」です。
「うま味=正義」「渋味・苦み=悪者」という概念に囚われずに、「おっ、このお茶はこんな表情もあるのか?」と受け止めていただけると幸いです。
ぜひ、これからも素敵な日本茶ライフをお過ごしください!